外国人講師の給与を決める前提
給与を決めるのは、担当してもらう職務の内容(レッスン・教材作成・カリキュラム関与などの範囲と責任)と、講師の転職市場における相場です。国籍を理由に賃金へ差をつけることは労働関係法令上も認められません。
もう一つの前提が、在留資格が給与の実質的な下限を規定することです。就労ビザで常勤雇用する場合は「日本人と同等以上」の報酬が許可要件に関わり、アルバイト等では地域別最低賃金が下限になります。つまり外国人講師の給与設計は、相場と法令の両方を満たすレンジを探す作業です。
在留資格と給与の関係(技人国の「同等以上」要件・ワーホリ/留学生の扱い)
「日本人と同等以上」の給与が求められる考え方
常勤講師の雇用で代表的な「技術・人文知識・国際業務(技人国)」では、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上であることが許可の基準になります。趣旨は、国籍を理由に賃金を不利にしないことにあります。
実務上の根拠になりやすいのは、自校の給与テーブルです。同じ職務・同じ立場の日本人講師(または日本人を雇うとした場合の条件)に適用する賃金レンジがあれば、それが最も説明力の高い基準になります。相場より明らかに低い提示は、応募が集まらないだけでなく、在留資格の審査にも影響し得る点に注意してください。
▶ 在留資格の種類(技人国・教育など)や申請の流れ、必要書類は外国人講師を雇用するための就労ビザと手続きで詳しく解説しています。
ワーキングホリデー・留学生(資格外活動)の賃金の扱い
ワーキングホリデーや留学生アルバイト(資格外活動許可)で講師を採用する場合も、「ビザが違うから安く」は成立しません。最低賃金法や同一労働同一賃金の考え方は在留資格に関係なく適用され、同じレッスンを担当するなら同じ基準で払うのが原則です。
実務面では、留学生は週28時間以内という労働時間の上限があるため、コマ単位で柔軟に組める非常勤・アルバイトの給与設計と相性が良い雇用パターンです。一方でワーホリは滞在期間が最長1年と限られるため、採用・研修コストの回収期間を考えると、時給を抑えるより「早く戦力化する研修設計」の方が費用対効果に効きます。
雇用形態別|外国人講師の給与相場
| 雇用形態 | 給与の単位 | 相場の目安 | 在留資格上の留意点 |
|---|---|---|---|
| 正社員(常勤講師) | 月給 | 25万〜35万円程度 | 技人国等。日本人と同等以上の報酬が要件に関わる |
| 契約社員 | 月給 | 22万〜30万円程度 | 同上。契約期間と更新条件の明示が重要 |
| 非常勤講師 | コマ給 | 1コマ1,500〜3,000円程度 | 雇用パターンにより異なる。内訳(準備含むか)の明示が必須 |
| アルバイト | 時給 | 1,200〜2,000円程度 | 留学生は週28時間以内。地域別最低賃金が下限 |
| 業務委託 | コマ単価/月額 | 内容により幅が大きい | 指揮命令はできない(雇用との線引きに注意) |
※金額はいずれも一般的な目安であり、地域・経験・担当内容によって変動します。
正社員(常勤講師)の給与レンジ
常勤講師の月給は25万〜35万円程度が一つの目安ですが、実際のレンジは担当範囲で決まります。レッスンのみか、カリキュラム作成・教材開発・他講師のトレーニングまで担うのかで、職務価値は大きく変わります。
技人国で雇用する場合、この月給が「日本人と同等以上」の基準を満たすことが前提になるため、自校の日本人スタッフの給与テーブルと整合させたうえで、賞与・昇給の扱いも募集時に明示しておくと、審査・採用の両面で説明がぶれません。
契約社員の給与レンジと更新時の考え方
契約社員だから正社員より低くてよい、という単純な話ではありません。賃金差をつけるなら、職務範囲・責任・評価対象がどう違うのかを整理し、合理的に説明できる形にしておく必要があります。
更新時の条件見直しは、外国人講師との間でトラブルになりやすいポイントです。更新の判断基準(レッスン品質・生徒継続率など)と昇給の考え方を初回契約時に文書で示しておくと、更新交渉のコストが大きく下がります。
非常勤講師の時給・コマ給の相場と設計
講師採用で最も設計が難しいのがコマ給です。相場は1コマ(40〜60分)あたり1,500〜3,000円程度に分布しますが、金額そのものより重要なのが「そのコマ給に何が含まれるか」です。
レッスン準備・教材印刷・レッスン後の報告や引き継ぎといった授業外の作業を含むのか、別途支払うのかが不明確な求人は、応募段階で敬遠されるだけでなく、採用後の不満・離職の火種になります。授業外の拘束時間まで含めた実質時給が地域別最低賃金を下回らないことも、設計段階で必ず確認してください。
アルバイト・業務委託の相場と注意点
アルバイトの時給は1,200〜2,000円程度が目安で、下限は地域別最低賃金で決まります。留学生の場合は週28時間の上限があるため、シフト設計とセットで考える必要があります。
業務委託でレッスンを依頼する場合は、給与ではなく報酬(コマ単価・月額)の世界になりますが、注意すべきは働き方の実態です。シフトを指定し、教え方を細かく指示するなら、それは雇用に近い働き方であり、委託契約のままでは問題になり得ます。
▶ どの形態で講師を確保するかの選び方・費用比較は、ネイティブ講師の派遣と直接雇用はどちらが安い?で詳しく整理しています。
勤務先タイプ別|給与水準の目安
| 勤務先タイプ | 給与水準の傾向 | 特徴(講師から見た魅力・採用側の含意) |
|---|---|---|
| 英会話教室・語学スクール | 月給25万〜35万円程度/コマ給制も多い | 夕方・土日中心のシフト。コマ給の内訳明示が応募率を左右 |
| ALT(学校派遣) | 月給20万〜28万円程度 | 平日日中・長期休みあり。派遣経由が中心で直接の競合になりにくい |
| 公立・私立学校(直接雇用) | 常勤は学校の給与規程に準拠 | 安定性が高く、常勤ポジションは競争力が強い |
| オンライン英会話 | 時給1,000〜2,000円程度 | 在宅で柔軟。対面スクールの時給の比較対象になる |
| 大学(非常勤) | コマ単価は高め(1コマ数千円〜1万円超も) | コマ数が限られ、掛け持ちが一般的 |
英会話教室・語学スクール(成人・子ども向け)の相場
本記事の主読者である英会話教室・スクールでは、常勤の月給制と非常勤のコマ給制が併存するのが一般的です。レッスン単価と講師給与のバランスが経営の根幹になるため、「1コマの売上に対して講師コストを何割に収めるか」という設計から逆算し、その範囲で相場に負けない条件を作るのが実務的な進め方です。
ALT・学校(公立/私立)・オンライン・大学の水準差
他タイプの水準は、自校の条件を客観視する物差しとして使えます。特に見落とされがちなのがオンライン英会話です。在宅で働ける選択肢として講師側の比較対象に入っているため、対面スクールが同水準の時給しか出せない場合、通勤の手間の分だけ不利になります。対面ならではの価値(教室の一体感・昇給やキャリアの道筋)か、時給・手当での上乗せか、どちらで補うかを意識して条件を組んでください。
給与に影響する要因と地域差
経験・資格(TEFL等)・担当範囲による差
指導経験年数、TEFL/TESOL等の指導資格、日本語力、担当領域(子ども英語・ビジネス英語・試験対策)は、いずれもレンジを上下させる要因です。特にカリキュラム作成や新人講師のトレーニングまで任せる場合は、レッスン担当のみの講師と同じ給与では説明がつきません。評価項目として明文化し、昇給と連動させておくと、採用時にも更新時にも一貫した説明ができます。
都市部と地方の給与差と募集戦略(地域別最低賃金が下限)
給与水準には地域差があり、都市部の方が高くなる傾向がある一方、生活コストも高いため、額面だけの比較では講師に伝わりません。地方のスクールは、住宅補助や引越し支援、オンラインレッスンとの併用などを組み合わせることで、額面の差を埋める募集戦略が取れます。
そして時給・コマ給の設計で必ず確認すべきなのが地域別最低賃金です。都道府県ごとに毎年改定されるため、募集条件を作る際は最新の金額を確認し、授業外の作業時間まで含めた実質時給で下回らないラインを下限として設定してください。
募集・オファーで給与をどう提示するか
応募が集まる求人票の給与記載(レンジ・内訳・手当)
外国人講師の応募率を左右する最大の要素の一つが、給与記載の明確さです。金額のレンジ、コマ給の内訳(授業・準備・報告のどこまでを含むか)、交通費・住宅補助などの手当を具体的に書くほど、条件面の不安が消え、応募のハードルが下がります。
◎ 応募が集まりやすい記載例
コマ給 2,000円(50分レッスン+準備・報告含む)/月60コマの場合 月収120,000円+交通費全額支給。経験・資格により優遇。年1回の評価で昇給あり。
△ 避けたい記載例
コマ給 2,000円〜(詳細は面談時)。※内訳・コマ数の目安・手当の記載がなく、実質の収入がイメージできないため応募段階で敬遠されやすい。
昇給・評価の説明で採用後のミスマッチを防ぐ
採用時に「この先どう上がるのか」を説明できるかどうかは、オファー承諾率と定着率の両方に効きます。評価のタイミング(年1回など)、評価の観点(レッスン品質・生徒継続率・担当範囲の拡大)、昇給の考え方を、金額とセットで伝えてください。
初年度の条件だけで比較されると、体力のある大手スクールに負けやすくなります。中期の見通しを示すことは、額面を上げずに競争力を高める最も費用対効果の高い方法です。
よくある質問(FAQ)
まとめ|雇用形態と在留資格要件を踏まえて適正給与を決める
外国人講師の給与設計は、①雇用形態ごとの相場レンジを確認する、②在留資格の要件(常勤は日本人と同等以上・時給制は地域別最低賃金)で下限を確定する、③経験・資格・担当範囲でレンジ内の位置を決める、④求人票に内訳と手当まで明示する、の4ステップで進めると迷いません。
給与は相場との整合が前提となる「削れない」費用です。一方で、募集にかかる費用はゼロにできます。ArigatoJobsなら掲載費・成功報酬・初期費用なしで外国人講師の求人を掲載でき、浮いた募集費用を給与や手当に回すことで、同じ予算でも応募の集まる条件を作れます。外国人講師の採用をお考えの方は、英会話教室・スクール向けページもあわせてご覧ください。