介護の外国人採用は今どこまで進んでいるか
特定技能1号の在留者数を分野ごとに見ると、介護は受入れ見込数12万6,900人に対して在留者数7万9,884人、充足率63.0%です(令和8年6月末時点・速報値)。年間の増加数は2万4,968人で、この1年で在留者数が約2万5千人純増した計算になります。
宿泊分野の充足率17.3%、外食業分野の98.1%と並べると、介護の位置づけがはっきりします。枠はまだ残っていますが、直近1年で約2万5千人のペースで埋まりつつある分野です。採用を先送りするほど、候補者の取り合いは厳しくなります。
| 分野 | 受入れ見込数(人) | 在留者数(人) | 充足率 | 年間増加数(人) |
|---|---|---|---|---|
| 介護 | 126,900 | 79,884 | 63.0% | 24,968 |
| 宿泊 | 14,800 | 2,556 | 17.3% | 1,291 |
| 外食業 | 50,000 | 49,060 | 98.1% | 13,289 |
| 全分野合計 | 805,700 | 425,961 | 52.9% | 92,838 |
出典:出入国在留管理庁「特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年6月末時点・速報値)」(2026年9月20日取得)。受入れ見込数は令和8年1月23日の閣議決定による令和11年3月までの数値。年間増加数は令和7年6月末在留者数との差。
受け入れている施設の類型も見ておきます。厚生労働省の資料によると、特定技能外国人を受け入れている施設は特別養護老人ホームが10,563件で最も多く、次いで病院3,899件、認知症対応型共同生活介護3,752件、特定施設入居者生活介護3,087件です(令和7年9月12日時点。協議会への入会申請の集計で複数回答)。病院が2位に入っている点は、次に説明する人数上限の数え方で効いてきます。
出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」(令和8年3月25日・介護分野における特定技能協議会運営委員会資料)
自社は何人まで受け入れられるか
上限は「事業所単位で常勤介護職員の総数」
厚生労働省の運用要領は、次のように定めています。
1号特定技能外国人の人数枠は、事業所単位で、日本人等の常勤の介護職員の総数を超えないこととされています。
根拠は、介護分野の告示第2条第3号です。たとえば常勤の介護職員が20人の事業所であれば、特定技能外国人は20人まで受け入れられます。同じ法人でも、事業所Aの枠を事業所Bに回すことはできません。
出典:厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて(運用要領・別表)」(2026年9月20日取得)
誰を数えて、誰を数えないか
「常勤の介護職員」の範囲は、運用要領に具体的に書かれています。算定基準に含まれる介護職員とは「介護等を主たる業務として行う常勤職員」です。ここで注意したいのは、常勤換算ではなく「常勤職員の人数」で数える点です。運用要領に常勤換算という語は出てきません。
| 算定に含まれる | 算定に含まれない |
|---|---|
|
・介護等を主たる業務として行う常勤職員 ・医療機関において、看護師・准看護師の指導の下に療養生活上の世話を行う診療報酬上の看護補助者 ・その看護補助者の指導を同一病棟で行っている看護師・准看護師 ・介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士 ・在留資格「介護」により在留する者 ・永住者や日本人の配偶者など、身分・地位に基づく在留資格により在留する者 |
・介護施設の事務職員 ・就労支援を行う職員 ・看護業務を行う看護師・准看護師 ・技能実習生 ・EPA介護福祉士候補者 ・留学生 |
出典:厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて(運用要領・別表)」
実務上ポイントになるのは2点です。第一に、病院では診療報酬上の看護補助者が算定に含まれます。看護補助者の多い病棟は、思ったより枠が大きい場合があります。第二に、「日本人等」には、国家試験に合格したEPA介護福祉士、在留資格「介護」で在留する外国人、そして永住者や日本人の配偶者など身分・地位に基づく在留資格で在留する外国人が含まれます。つまり、介護福祉士の資格を取った外国人職員は、次の特定技能外国人を受け入れるための「枠を広げる側」に回ります。反対に、技能実習生・EPA候補者・留学生は何人いても枠を広げません。
分野全体の枠はどれだけ残っているか
事業所の枠とは別に、介護分野全体にも上限があります。令和8年1月23日の閣議決定で、介護分野の1号特定技能外国人の受入れ見込数は令和6年度から5年間で12万6,900人と定められ、これが令和10年度末までの受入れ上限として運用されています。あわせて、令和9年度から2年間の育成就労外国人の受入れ見込数は3万3,800人です。
表①のとおり、在留者数は見込数の6割を超え、直近1年で約2万5千人増えています。事業所の枠に余裕があっても、分野全体の枠は年々狭まっていく方向です。また、受入れ見込数そのものも閣議決定のたびに見直されるもので、実際に宿泊分野などでは今回の閣議決定で数値が引き下げられています。「枠がなくなる」と煽るつもりはありませんが、分野全体の枠は固定ではないという前提は持っておいてください。最新の数値は表①の出典で確認できます。
出典:出入国在留管理庁「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(別紙1・令和8年1月23日閣議決定)」(2026年9月20日取得)
どの在留資格で採用するか(4つのルート)
| ルート | 在留期間 | 主な要件 | 事業所の人数枠 | 訪問介護 | 家族の帯同 | 向いている採用目的 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 特定技能1号「介護」 | 通算で上限5年(介護福祉士国家試験のパート合格による延長措置の要件を満たした場合は通算6年まで) | 日本語の基礎要件(「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上。国際交流基金日本語基礎テストや日本語能力試験N4などで確認)と、介護特定技能評価試験(技能)・同(日本語)の合格。または技能実習2号(介護)を修了 | あり(常勤介護職員の総数まで) | 条件付きで可(令和7年4月21日施行) | 基本的に認めない | 即戦力を一定期間確保し、介護福祉士取得まで育てたい |
| 在留資格「介護」 | 5年・3年・1年・3月。在留期間の更新に回数の上限はない | 介護福祉士の資格を有すること | なし(「日本人等」として枠を広げる側) | 従前から従事可(訪問系従事の通知は技能実習・特定技能が対象) | 「家族滞在」の対象 | 長期の中核人材。介護福祉士としての専門性を活かしたい |
| 技能実習 → 育成就労(令和9年4月1日〜) | 技能実習は最大5年。育成就労は3年以内の育成就労計画 | 育成就労(介護)は入国時に日本語A2.2相当以上。本人意向による転籍制限は2年 | 育成就労も事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数が上限(技能実習は技能実習制度の受入れ人数枠) | 条件付きで可(技能実習は令和7年4月1日施行) | 「家族滞在」の対象外 | 未経験者を受け入れ、特定技能へつなげて育成したい |
| EPA(インドネシア・フィリピン・ベトナム) | 候補者としては原則4年(インドネシアは改正EPAにより2027年度入国者から最大5年)。資格取得後は更新回数に制限なし | 国際厚生事業団(JICWELS)を通じた受入れ。就労しながら介護福祉士国家試験の合格を目指す | 候補者は枠に含まれない。合格後のEPA介護福祉士は枠を広げる側 | 候補者の訪問系従事は別途通知待ち | 資格取得後は帯同可 | 国家試験合格まで施設が育成する前提で、長期の人材を確保したい |
出典:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」、同「在留資格「介護」」、同「在留資格「家族滞在」」、同「育成就労制度の概要」、厚生労働省「インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて」、同「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について」、同「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」、国際厚生事業団「日尼EPA改正に伴うEPAインドネシア人看護師・介護福祉士候補者の滞在期間変更について」(いずれも2026年9月27日取得)
4ルートの規模感は次のとおりです。基準日が資料ごとに異なるため、各数値に基準日を併記しています。
特定技能1号「介護」
現在もっとも人数が多いルートで、在留者数は7万9,884人です(令和8年6月末・速報値)。試験ルートで採用する場合、令和8年4月から試験名が「介護特定技能評価試験(技能)」「介護特定技能評価試験(日本語)」に変わりました(旧名称は介護技能評価試験・介護日本語評価試験)。あわせて受験料は令和8年4月1日以降の実施分から、両試験とも1,000円程度から2,000円程度に改定されています。旧名称で表記された合格証や案内も残っているため、応募者とのやりとりでは両方の名称に触れておくと混乱を防げます。
出典:出入国在留管理庁「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(別紙1)」、厚生労働省「介護技能評価試験及び介護日本語評価試験の受験料改定について」(2026年9月24日取得)
現場での判断材料は「通算5年」という期限です。介護分野は特定技能2号の対象外で、運用要領も「熟練した技能を有する外国人材は、介護福祉士資格を有する者として、在留資格「介護」での在留が可能である」ことから2号での受入れは行わないとしています。5年を超えて長く働き続けてもらうには、原則として介護福祉士の資格を取り、在留資格「介護」へ移ってもらう必要があります(後述するパート合格による最長6年までの延長措置を除く)。入社初日から5年後の国家試験を逆算した育成計画を組めるかどうかが、このルートを選ぶ条件です。
在留資格「介護」
介護福祉士の資格を持つ外国人が、介護または介護の指導を行う業務に従事するための在留資格です。在留期間は5年・3年・1年・3月で、更新回数に制限はありません。家族滞在の対象でもあり、長く働いてもらう前提の設計に向いています。
採用担当者として押さえておきたいのは、この在留資格で働く職員は「日本人等」に含まれ、特定技能外国人を受け入れる枠を広げる側に回ることです。介護福祉士養成施設を卒業した留学生や、特定技能・EPAから資格を取得した職員がここに移ります。
技能実習・育成就労(2027年4月〜)
技能実習制度は、令和9年(2027年)4月1日から育成就労制度に移行します。育成就労では、育成就労計画に定める期間が3年以内で、介護分野の入国時の日本語要件は「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上です。入国1年経過時には介護育成就労評価試験(初級)の合格と、A2.2相当以上に加えて日本語学習プランの作成が求められます(B1相当以上に合格している場合はプランは不要)。本人の意向による転籍(事業所の変更)は、介護分野では就労開始から2年間制限されます。
現場での判断材料は「育成の入口」としての位置づけです。育成就労から特定技能1号へ移行するには、介護育成就労評価試験(専門級)の合格に加えて、A2.2相当以上の日本語能力と介護特定技能評価試験(日本語)の合格が求められます(専門級は介護特定技能評価試験(技能)相当として扱われるため、技能試験を別に受ける必要はありません)。3年の育成就労と5年の特定技能を合わせて、介護福祉士の受験資格(実務経験3年以上+実務者研修)を満たしながら国家試験まで導く、8年がかりの育成設計になります。
なお、施行日前に入国して施行日時点で技能実習を行っている人は、引き続き技能実習を続けられます。
EPA(経済連携協定)
インドネシア・フィリピン・ベトナムとの経済連携協定に基づき、介護福祉士候補者を受け入れる制度です。受入れの調整機関は国際厚生事業団(JICWELS)のみで、候補者は受入れ施設で就労しながら国家試験の合格を目指します。候補者としての在留期間は原則4年です。インドネシアについては2026年8月1日に改正EPAの議定書が発効し、発効後に入国する2027年度の候補者から最大5年が適用されます(すでに在籍している候補者は、協定外の特例延長を含めて従来から最大5年で、扱いは変わりません)。
国家試験に合格すると、介護福祉士として在留期間の更新回数に制限なく働けます。在留者数は3,004人(令和8年2月1日時点)で、うち資格取得者が435人です。数は多くありませんが、施設側の学習支援を前提とした制度で、合格までの伴走を組織的にできる施設に向いています。
自社の状況別・ルートの選び方
半年以内に一定数の即戦力が必要なら、国内在住の特定技能1号(試験合格者や技能実習2号修了者)が現実的です。海外から呼び寄せる場合は在留資格認定証明書の交付申請と査証の手続きが加わり、就労開始まで時間がかかります。
5年を超えて中核人材として残ってほしいなら、最初から在留資格「介護」の資格者を採用するか、特定技能で採用して5年以内の介護福祉士取得を支援するかのどちらかです。後者は、次の章で説明するパート合格による在留期間延長の措置も使えます。
未経験者を時間をかけて育てる余裕があるなら、育成就労かEPAです。どちらも施設側の教育負担は大きくなりますが、育成の過程で事業所への定着が進みやすいという特徴があります。
訪問系サービスに出す予定がある場合、追加要件がかかるのは特定技能1号と技能実習(育成就労)の2ルートです。介護福祉士の資格を持つ在留資格「介護」の職員は従前から訪問系に従事でき、この追加要件は課されません。一方、EPA介護福祉士候補者は現時点では訪問系サービスに従事できません(国家試験に合格したEPA介護福祉士は従事できます)。
▶ 訪問系サービスの追加要件と遵守事項は 特定技能で訪問介護は可能?解禁の内容と受け入れ要件で詳しく解説しています。
採用から就労開始までの流れと費用
▶ 特定技能全体に共通する支援計画の10項目や受入れ後の定期届出は 特定技能「宿泊」の受け入れ完全ガイドで詳しく説明しています。
手続きのステップと必要書類
介護分野で特徴的なのは、在留諸申請の前に「介護分野における特定技能協議会」への加入が必要な点です。運用要領には、介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる場合、当該外国人に係る在留諸申請の前に協議会に加入し、加入後は協議会に必要な協力を行うことが定められています。協議会に加入しないまま在留資格の申請を出すことはできません。
| ステップ | 実施主体 | 主な書類・作業 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 1. 候補者の要件確認 | 施設 | 介護特定技能評価試験(技能・日本語)の合格証明と、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上の合格証明。または介護職種の技能実習2号の修了を示す書類 | 令和8年4月に名称変更。旧名称(介護技能評価試験・介護日本語評価試験)の合格証も同じ試験 |
| 2. 人数枠の確認 | 施設 | 事業所ごとの常勤介護職員数の一覧 | 表②の範囲で数える。法人合算ではなく事業所単位 |
| 3. 雇用契約の締結 | 施設・本人 | 特定技能雇用契約書、雇用条件書 | 報酬額は日本人と同等以上、所定労働時間は日本人と同等 |
| 4. 支援計画の策定 | 施設(または登録支援機関) | 1号特定技能外国人支援計画書 | 支援の全部を登録支援機関に委託することも可能 |
| 5. 協議会への加入 | 施設 | 協議会申請システムでの入会申請、入会証明書の発行 | 在留諸申請の前に加入する。協議会の現名称は「介護分野における特定技能・育成就労協議会」(令和9年5月31日までの入会・更新分は旧名称の証明書) |
| 6. 在留諸申請 | 施設(本人)→地方出入国在留管理局 | 海外在住者:在留資格認定証明書交付申請/国内在住者:在留資格変更許可申請 | 海外在住者はこの後に査証申請・入国が続く |
| 7. 就労開始・届出 | 施設 | 協議会申請システムへの外国人情報の登録(受け入れた日から4か月以内)、出入国在留管理庁への各種届出、ハローワークへの外国人雇用状況の届出 | 協議会への協力を欠くと受入れの基準を満たさなくなる。受入れ後も定期・随時の届出義務が続く |
出典:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」、厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて(運用要領・別表)」、国際厚生事業団「介護分野における特定技能協議会への手続き」、厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」(2026年9月27日取得)
費用の内訳
費用は「必ず発生するもの」と「採用経路によって発生するもの」に分けて考えます。
必ず発生するのは、入管への申請手数料と、受入れ後の支援にかかる費用です。在留資格変更許可申請と在留期間更新許可申請の手数料は、2026年10月1日以降に受け付けた申請から、許可される在留期間に応じた額に改定されます。特定技能1号で1年の許可なら窓口申請33,000円・オンライン申請27,000円、6月超1年未満なら窓口25,000円・オンライン21,000円です(オンラインは別途決済手数料)。2026年9月30日までに受け付けた申請は、許可が10月以降になっても改定前の窓口6,000円・オンライン5,500円のままです。在留資格認定証明書の交付申請には手数料がかかりませんが、海外からの呼び寄せでは渡航費や住居の初期費用を施設が負担する場合があります。支援計画の実施を登録支援機関に委託する場合は、委託料が継続的に発生します(金額は機関によって異なります)。
採用経路によって発生するのは、人材紹介会社への紹介手数料と、送り出し機関を経由する場合の費用です。紹介手数料は採用が決まった時点でまとまって発生するため、複数人を採用すると初年度の費用を大きく押し上げます。一方で、掲載費や成功報酬のかからない求人媒体を使って直接募集する経路もあり、ArigatoJobsのように掲載費・成功報酬・初期費用なしで外国人求職者に求人を届けられる媒体を使えば、この費目をゼロにできます。紹介と直接募集を組み合わせ、費用を教育や定着支援に回す設計が現実的です。
出典:出入国在留管理庁「2026年10月1日から外国人の在留手続に関する手数料が改定されます。」、同「在留資格認定証明書交付申請」(2026年9月27日取得)
5年後を見据えた設計
特定技能から介護福祉士へ
特定技能や技能実習で就労している外国人は、介護福祉士国家試験を「実務経験ルート」で受験します。3年以上の実務経験に加えて実務者研修の修了が必要で、実務経験だけでは受験できません。特定技能で入国した職員の場合、就労3年目までに実務者研修を終えれば3年目から受験でき、5年目までに複数回の受験機会があります。実務者研修の受講費用や学習時間の確保を施設が支援できるかどうかで、合格率は大きく変わります。
合格して在留資格「介護」に変更すれば、在留期間の更新回数に制限がなくなり、家族の帯同もできるようになります。施設側にとっては、その職員が人数枠の「日本人等」に数えられるようになり、次の特定技能外国人を受け入れる余地も広がります。
出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 受験資格(資格取得ルート図)」(2026年9月24日取得)
国家試験のパート合格による在留期間の延長
5年以内に合格できなかった場合の救済措置が、令和8年1月の厚生労働省通知で示されました。介護福祉士国家試験の「パート合格」の仕組みを使い、一定の要件を満たす特定技能外国人について、通算在留期間が6年に達するまで在留を認める措置です。根拠は厚生労働省社会・援護局長通知(社援発0121第10号、令和8年1月21日)で、同年3月30日に一部改正されています(社援発0330第27号)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 5年の通算在留期間に達する前の最終年度に国家試験を全パート受験した特定技能外国人 |
| 要件① | 1パート以上に合格していること |
| 要件② | 総得点に対する合格基準点の8割以上の得点があること |
| 要件③ | 翌年度の国家試験合格に向けた学習意欲があり、学習の振り返りができていること |
| 要件④ | 延長期間中に国家試験を受験し、合格時は速やかに在留資格変更申請を、不合格時は速やかに帰国することを本人が誓約すること |
| 要件⑤ | 特定技能所属機関が引き続き本人を雇用する意思があること |
| 延長される期間 | 通算在留期間が6年に達するまで |
| 手続き | 所属機関が確認依頼書(別紙様式1)と学習計画(別紙様式2)などを厚生労働省へ郵送し、確認結果をもって出入国在留管理局に在留期間更新許可申請を行う |
| 厚生労働省への送付期限 | 受験した年の4月末日(締切当日消印有効)。在留期限が先に来る場合は期限を待たず速やかに送付する |
出典:厚生労働省「介護福祉士国家試験のパート合格による通算在留期間の延長に関する措置について(社援発0121第10号)」、同「措置の案内ページ」(2026年9月20日取得)
「4月末日」は厚生労働省への確認依頼書類の送付期限で、入管への在留期間更新申請の期限ではありません。更新申請は在留期限が来る前に行う必要があるため、在留期限が4月末より先に来る職員については、期限を待たずに合格発表後すぐ確認依頼を送ります。
第38回(令和7年度)試験から導入され、送付期限は令和8年4月30日(消印有効)でした。次回以降も同じで、令和9年の試験を受ける職員なら令和9年4月末です。対象になりそうな職員がいる施設は、自己採点の段階で確認依頼書と学習計画の準備を始めてください。
使える補助金・助成金
国が事業者に直接交付し、対象として「外国人」を明記している助成金は、人材確保等支援助成金の「外国人労働者就労環境整備助成コース」です。介護に限らず全業種が対象で、雇用労務責任者の選任、就業規則等の多言語化、苦情・相談体制の整備、一時帰国のための休暇制度の整備、社内マニュアル・標識類等の多言語化という就労環境整備措置の導入に対して、1制度導入につき20万円(上限80万円)が支給されます。ただし、雇用労務責任者の選任と就業規則等の多言語化の2つは必須で、これに加えて残る3つのいずれかを導入することが受給の条件です。特定技能外国人を雇用している、または雇用しようとしている事業所では「苦情・相談体制の整備」が対象外となるため、「一時帰国のための休暇制度の整備」か「社内マニュアル・標識類等の多言語化」を選びます。
注意点は2つあります。就労環境整備計画の計画届を、計画期間の初日からさかのぼって6か月前の日から1か月前の日までに提出する必要があり、措置を実施した後からは申請できません。また、外国人労働者の離職率が15%以下であることが要件です(算定期間の初日の外国人労働者数が2人以上10人以下の場合は、離職者が1人以下であること)。
なお、この助成金は令和8年10月に改正が予定されており、省令案では支給額が上限25万円に見直され、措置の一部が統合・廃止されます(施行前に計画届を提出した事業主には改正前の要件・支給額が適用)。申請前に最新の支給要領を確認してください。
介護分野に固有の支援は、地域医療介護総合確保基金のメニューとして国が枠組みを作り、都道府県が実施しています。外国人介護人材受入施設等環境整備事業、外国人留学生への奨学金の給付等に係る支援事業、外国人介護人材研修支援事業などがこれにあたります。同じ事業名でも、補助率・上限・受付時期は都道府県ごとに異なります。たとえば大阪府の外国人介護人材受入施設等環境整備事業は、補助率2/3(基準額30万円)、1施設等あたり上限20万円、1回限りの交付です。金額や受付期間を確認するには、自県の介護保険担当課のページか交付要綱にあたる必要があります。
| 制度名 | 実施主体 | 対象 | 金額の例 | 申請時期 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) | 国(労働局) | 外国人労働者を雇用する事業主(全業種) | 1制度導入につき20万円(上限80万円)※令和8年10月に上限25万円への改正予定 | 計画期間の初日の6か月前〜1か月前に計画届を提出 | 雇用労務責任者の選任と就業規則等の多言語化が必須。事後申請は不可。外国人労働者の離職率15%以下が要件 |
| 外国人介護人材受入施設等環境整備事業 | 都道府県(地域医療介護総合確保基金) | 外国人介護人材を受け入れる介護施設等 | 大阪府の例:補助率2/3(基準額30万円)、上限20万円、1回限り | 都道府県ごとに異なる(大阪府は事業実施の1か月前までに事前申請) | 補助率・上限・受付の有無・対象施設は県ごとに確認する(大阪府の対象は施設系が中心) |
| 介護福祉士修学資金等貸付制度 | 都道府県(都道府県社会福祉協議会等が実施) | 介護福祉士養成施設の在学者本人 | 学費・入学準備金・就職準備金などの貸付(額は実施主体の要領による) | 養成施設在学中 | 「貸付」。卒業後1年以内に、貸付を受けた都道府県内で介護等の業務に就き、5年間継続して従事すると返還が全額免除 |
| 外国人留学生への奨学金の給付等に係る支援事業 | 都道府県(地域医療介護総合確保基金) | 留学生に奨学金の給付等を行う就労予定先の介護施設等 | 都道府県ごとに異なる | 都道府県ごとに異なる | 「補助」。施設が留学生に給付した費用を県が補助する仕組み |
出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」(令和8年4月1日現在)、同「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(令和8年3月)」、同「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」(介護福祉士修学資金等貸付事業)、e-Gov「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案(案件番号495260147)」、大阪府「外国人介護人材受入施設等環境整備事業」(いずれも2026年9月27日取得)
表の下2行は混同されやすいので補足します。介護福祉士修学資金は学生本人が借りる「貸付」で、施設が受け取るお金ではありません。一方の留学生奨学金支援事業は、施設が留学生に給付した奨学金の費用を都道府県が補助する「補助」です。
補助金は採用費の一部を埋める手段であって、採用費そのものを決めるのは採用経路です。有料の紹介や派遣に費用をかける前に、掲載費0円の媒体で直接募集する選択肢を試しておくと、補助金に頼らずに済む範囲が広がります。
課題とその対処
- 日本語でのコミュニケーションと記録。特定技能1号の日本語要件は「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上(N4などで確認)に加えて介護特定技能評価試験(日本語)の合格が基準で、介護の専門用語や利用者ごとの言い回しは入職後の学習が前提です。記録業務は音声入力や定型文の活用で負担を下げられます。
- 利用者・家族の受け止め。事前の説明と、担当が変わるときの丁寧な引き継ぎで多くは解消します。訪問系サービスでは書面での説明と署名が求められており、施設系でもこれに準じた説明を用意しておくと安心です。
- 人数枠の読み違い。常勤換算で数えてしまう、法人全体で数えてしまう、技能実習生や留学生を「日本人等」に入れてしまう、の3つが典型です。表②に沿って事業所ごとに一覧を作っておけば防げます。
- 5年後の出口が描けていない。特定技能は通算5年です。介護福祉士の受験までの研修日程を採用時に共有し、パート合格の救済措置も含めて説明しておくと、本人のモチベーションと定着に直結します。
定着のために現場でやること
日本語教育と多文化理解
日本語学習は「本人任せ」にすると続きません。業務時間内に週1回でも学習時間を確保する、介護の専門用語集を施設で作る、日本人職員側も「やさしい日本語」で話す研修を受ける、という三方向の取り組みが有効です。宗教上の習慣や食事の配慮は、入職前の面談で確認し、シフト表に反映しておきます。
指導とキャリアの見通し
指導担当者を決め、OJTの到達目標を月単位で示します。「いつまでに何ができるようになるか」が見えると、外国人職員の不安は大きく減ります。介護福祉士の受験資格を満たす時期、実務者研修の受講時期、国家試験の受験年度をカレンダーに落とし、本人と共有してください。ここまでやると、5年後に在留資格「介護」へ移行して残ってもらえる確率が上がります。
訪問介護で受け入れたい場合
訪問系サービスへの外国人介護人材の従事は、技能実習が令和7年4月1日、特定技能が令和7年4月21日に解禁されました。ただし施設系とは違い、介護職員初任者研修の修了と実務経験などの追加要件があり、受入事業所には研修・同行訪問・利用者への書面説明といった遵守事項が課されます。
▶ 同行訪問の期間は実務経験によって分かれるなど、通知本文まで読まないと分からない要件も多いため、特定技能で訪問介護は可能?解禁の内容と受け入れ要件で詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
まとめ|人数枠の確認から始めて、5年後の出口まで設計する
介護施設の外国人採用は、在留資格を選ぶ前に「自社の事業所は何人まで受け入れられるか」を確認するところから始まります。上限は事業所単位で常勤介護職員の総数、数え方は表②のとおりです。4つのルートは、即戦力なら特定技能1号、長期の中核人材なら在留資格「介護」、未経験からの育成なら育成就労かEPAという使い分けになります。
特定技能は通算5年が上限なので、採用時点で介護福祉士の受験までの日程を描いておくことが定着の鍵です。補助金は都道府県の事業が中心で、金額も受付時期も県ごとに異なります。
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参考資料(一次情報)
- 入管庁 特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年6月末時点・速報値)(PDF)
- 入管庁 介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(別紙1・令和8年1月23日閣議決定)(PDF)
- 入管庁 特定技能ガイドブック〜特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ〜(PDF)
- 入管庁 育成就労制度の概要(PDF)
- 入管庁 在留資格「介護」
- 入管庁 在留資格「家族滞在」
- 入管庁 在留資格認定証明書交付申請
- 入管庁 2026年10月1日から外国人の在留手続に関する手数料が改定されます。(PDF)
- 厚生労働省 介護分野における特定技能外国人の受入れについて(運用要領・別表)(PDF)
- 厚生労働省 介護分野における特定技能外国人の受入れについて
- 厚生労働省 外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について(令和8年3月25日)(PDF)
- 厚生労働省 外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について(PDF)
- 厚生労働省 介護福祉士国家試験のパート合格による通算在留期間の延長に関する措置について(社援発0121第10号)(PDF)
- 厚生労働省 介護福祉士国家試験のパート合格による通算在留期間の延長に関する措置(案内ページ)
- 厚生労働省 介護技能評価試験及び介護日本語評価試験の受験料改定について
- 厚生労働省 インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて
- 厚生労働省 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)(PDF)
- 厚生労働省 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(令和8年3月)(PDF)
- 社会福祉振興・試験センター 介護福祉士国家試験 受験資格(資格取得ルート図)
- 国際厚生事業団 介護分野における特定技能協議会への手続き
- 国際厚生事業団 日尼EPA改正に伴うEPAインドネシア人看護師・介護福祉士候補者の滞在期間変更について
- e-Gov 雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案(案件番号495260147)
- 大阪府 外国人介護人材受入施設等環境整備事業
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